20世紀的脱Hi-Fi音響論(シーズンオフ)


 我がオーディオ装置はオーデイオ・マニアが自慢する優秀録音のためではありません(別に悪い録音のマニアではないが。。。)。オーディオ自体その時代の記憶を再生するための装置ということが言えます。「北欧デザインに氷漬け」は、初老を迎えたオーディオマニアがほんの少しインテリアのことを気にした結果、スピーカーに何やらイタズラをしてみたくなった状況をモニターします。
北欧デザインに氷漬け・リベンジ
今までの経緯
【モダンデザインへの疼き】
冒険は続く
掲示板
。。。の前に断って置きたいのは
1)自称「音源マニア」である(ソース保有数はモノラル:ステレオ=1:1です)
2)業務用機材に目がない(自主録音も多少やらかします)
3)メインのスピーカーはシングルコーンが基本で4台を使い分けてます
4)映画、アニメも大好きである(70年代のテレビまんがに闘志を燃やしてます)
という特異な面を持ってますので、その辺は割り引いて閲覧してください。


北欧デザインに氷漬け・リベンジ

【モダンデザインへの疼き】

 一端は終えたスピーカー装飾の旅も2年経ったので一心発起、今度はオランダのデ・ステイル風にまとめてみようと思った。う~ん、リートフェルトの椅子や、モンドリアンのアトリエはなんてキュートなんだろう!


シュレーダー邸(リートフェルト1924)、モンドリアンのアトリエ(1940年代)

 というわけで、ぶっちゃけモンドリアン先生のパクリであるが、なんとなくチューリップ畑と風車の組合せに似てなくもない。スピーカーの胴体を、チューリップの唄のとおり赤・白・黄色と塗り分け、少しアクセントを持たせるため黄色の部分を狭めにした。こうしてやると、スピーカー特有のポッカリ空いた空間が目立たなくなるようにも感じる。全部にサランネットを被せるとのっぺら坊、剥き出しだとこっちをジロッとみているようで気にしないというほうが無理、ということでの対応策でもある。

胴体をモンドリアン風に塗装


チューリップ畑と風車:オランダの原風景

 最初に胴体のデザインが決まったのだが、ツイーターを同軸にして収めるか、音響的な何かもう一歩進めるかで、しばらく悩んだところ、猫お餌皿が半割れタマゴを裏返しに重ねた形で、くびれ具合がブランクーシやアルプのオブジェと似ていたので採用。

 蓋は手提げ用アクリル製リングにサランネットを固定した。両面テープで仮固定したあと、液状の瞬間接着剤をサランネットを引っ張りながら垂らしてやると綺麗に張れる。余った布をトリミングして完成。


 猫の餌皿が15°と絶妙に傾いて良い感じだったので、スピーカーの軸に疑似的な消失点をつくってみた。もともと、私のスピーカーは、人間工学的なデザインをしているのだが、胴体と頭部の骨格的な結び付きが明確になったことで、結果としてボーカルの発声がより立体的になって、音がポッカリ浮いた感じになった。

人体の発声機能と共振周波数の関係

人体の骨格とスピーカーユニットの軸線

 あと30cmのスピーカーだとすごく大きいと思う人が多いのだが、モノラル試聴にすることで、ディスクサイドに置いても人間ひとり分のスペースしかとらない、とても省スペースなオーディオにもなっている。机など含めても2畳くらいで十分なんじゃないだろうか? それでいて、しっかり実体感の強い音で鳴るのだから、なかなかのものである。
 これがステレオだと壁一面を占拠し、なおかつ三角形となるように空間を空けなければいけない。6畳間でも狭いのだが、スピーカーの背面を含めて3π空間を空けるとなるとさらに難しくなる。


 私自身はあまり知らなったのだが、ミッフィーの作者ディック・ブルーナさんは、デ・ステイルのリートフェルト邸に感化されて、シンプルなラインと配色を6色にしぼった独特の画風に到達したのだという。同じオランダのモダン・デザインの系譜をしっかり組んで、それでいて誰でも親しめる内容にまで昇華させたのだ。というわけで、ミッフィーの人形を飾ってみた。。。もう少し大きくてもよかったかな? ちなみに耳の丸いミッフィーは1980年代以降の最終形で、実はブルーノさん自身も気付いていなかったらしい。メディコムトイのUDFシリーズは安価ながらしっかりできていて、昔のソフビ人形のように張りぼてじゃなく中身がしっかり詰まってるし、ミッフィーとふうせんは微妙に首をかしげてたり、ボリスは片足を少し上げたり(ついでに少し転びやすかったり)と、色々と細かいところに気を使ってる。3Dアニメ版もこのくらい造り込めば…というのはナシとして、動いてなくてもちゃんと表情があって、物語が自然と浮かぶのが究極のシンプルだと思う次第だ。


 続くミッションは「積み木の城」をミッフィーの背景にもってくること。「積み木」はすごく古いようでいて、1838年にドイツの幼児教育学者フリードリッヒ・フレーベルが第3~6の恩物として発表した近代的なモノだ。日本では1876年に幼稚園がはじまった頃から使われており、このため西欧社会に古くからあったように思うのだが、幾何学の特徴を直感的に養う知育教育として当時は最先端のものだった。こうしてみると、ミッフィーのツートンカラーと近代幼児教育のモダニズムとが巧くからみついて、なかなか面白い感じに仕上がっている。

 ちなみにバウハウスでも形状や色彩の授業があったらしく、パウル・クレーのスケッチ、カンディンスキーの形状学、モンドリアンとドゥースブルフの造形主義、マレーヴィチの無対象の造形と続くが、他の半分が建築へと興味を引いていたことを考えると、現代のモダン建築の系譜の最初のターニングポイントだったといえる。バウハウスの一番の興味は生活そのものの改善だったのだ。

 さて、今までスピーカー台として頑張ってきたニトリの回転椅子だが、少し趣向を変えて模様替えしようと思った次第。そもそも何で椅子かというと、スピーカーの箱であるAltec 618Bは、人間の胸板を模擬してデザインされたもので、標準的な椅子の幅40cmがちょうど良い塩梅ではまる。人間の体重を支えるくらいなので強度も十分。
 候補となるのは以下の3点。価格的に松竹梅に分けたが、どれもガッシリした業務用のものだ。RESULT CHAIRはオランダのデステイル運動の旗手ヘリット・リートフェルトの息子ウィムが1958年にデザインしたもので、優雅な足先が特徴となるもの。Virco 9000は、1960年代からスクールチェアとして使われた可愛らしい姿に似合わず頑丈な筐体が身の上で、絶対に転ばない安心感がある。最後はアイリスチトセのスタッキングチェアで、実はこれが老人ホームで不動の体操椅子として、軽くて持ち運びが楽なのに転ばないことで有名な逸材である。


RESULT CHAIR Virco 9000 アイリスチトセ PT-110V


 さて散々悩んだ挙句選ばれたのは・・・やっぱりニトリのスツールでした(-o*)\バキ
 なんとなく気になったのが、デザイナー家具を選んで物置として使うというのが、足蹴にしてるようでどうもピンとこない。このスツールは、いちよ商品紹介に「小さいテーブル代わりにも」と明記してあるし、BEAMS DESIGNと共同でデザインして2021年度のGマークに選ばれたし、というあまり理由にならない理由で、ニトリさまもまさかスピーカー台として使われるとは思っていまい。デザイン的にちょっとミッドセンチュリーっぽくて良い感じだ。

 あとはラグマットを敷いてあげるとか。。。それよりも部屋を片付けねば。

 オマケは深澤直人さんデザインのHiroshimaチェアだが、冬掛け用のストールを被せてみた。こんなことすると、折角の椅子の造形美を損ねるとお叱りをうけそうだが、造形曲線の人間っぽさがさらに浮き出る感じがある。季節に応じて涼し気にしたり、ぬくぬくにしたりと変化が楽しめる。



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