我がオーディオ装置はオーデイオ・マニアが自慢する優秀録音のためではありません。
オーディオ自体その時代の記憶を再生するための装置ということが言えます。
その記憶を辿りつつ適当にやってるのがこのサイトです。以下コンテンツ。
※第一夜〜六夜が自由気ままな独身時代、延長線は結婚後の減量体験です。(まってろよ力石!)

(第一夜)録音年代順のレビュー
(第二夜)ホーム・オーディオの夢
(第三夜)闘志を燃やすジャンル
(第四夜)トーキー・サウンド
(第五夜)華麗なる古楽器の世界
(第六夜)70年代歌謡曲
(後夜)オーディオの夢の行く末
(延長戦)結婚とオーディオ
掲示板
。。。の前に断って置きたいのは
1)自称「音源マニア」である(ソース保有数はモノラル:ステレオ=1:1です)
2)業務用機材に目がない(自主録音も多少やらかします)
3)メインのスピーカーはシングルコーンが基本で4台を使い分けてます
4)なぜかJBL+AltecのPA用スピーカーをモノラルで組んで悦には入ってます。
5)映画、アニメも大好きである(70年代のテレビまんがに闘志を燃やしてます)
という特異な面を持ってますので、その辺は割り引いて閲覧してください。





モニターの方法

 オーディオの品質管理の手法にはいろいろあって、音声のモニター方法というのはそのひとつです。もちろんほとんどの人は個人で楽しむためのオーディオなので、贔屓のメーカー製品を持ち上げて「〜が最高」という感じで集約することが多いでしょう。しかし最高を自認するということは「〜はダメ」というようにその他をけなすということにも繋がり、こういうケチをつける輩がオーディオ・マニアには意外に多い。CD1枚は高くても3000円です。それに比べオーディオ機器は数10万と非常に高価です。このことだけで比べても対費用の関係から、ほとんどのオーディオ・マニアは困ったことに演奏家に対して不遜で礼儀知らずなことが多いです。オーディオ・マニアが機材主体と云われる由縁は再生の主従が逆転したことからくるジレンマそのものかとも思えます。
 しかし私の場合はどうみてもオーディオ資産よりはソフトのほうが圧倒的に多いので音源マニアということになります。そのため所有する音源を活かすために様々な装置の工夫が必要になってきます。私が考えてる再生方法は、いわば音源を管理する人たちの手法を家庭用にダウンサイズしたものです。以下そのモニター方法の概略を述べます。

a.簡易PA装置

   JBL D130とAltec 802C+511B
   (積み重ねただけなので美観は勘弁を)


 PAとはパブリック・アドレスの省略で、ようするに駅の案内や校内放送のように大勢の人に音声で情報を伝える機器のことをいいます。オーディオの始まりも映画館やコンサートでの高品質再生にありましたから、実は古い録音ほど大きな会場での再生を意識したものになってます。ノイズなど気にせずに隈取りのはっきりした音で鳴らすほうが合っているのです。これが家庭用のオーディオ機器に行き着くまでには、様々なノウハウの積み重ねや変更がありました。オーディオ機器が個人の細かな趣向を反映する以前にあった、公を納得させる音響について見直す時期にあるように思います。

 私の所有しているのはJBL D130とAltec 802C+511Bホーンです。JBL D130は38cmながらフルレンジというだけあって、これ1発だけでもかなりの再生能力があります。帯域こそ8kHzまでですが、昔のジュークボックスはこの手の大型フルレンジ1発でダンスホールを満たしていました。今でもボーカルやギター用のPAスピーカーとして立派な現役を務めることができます。しかしこれにAltecのホーンを足すと音がさらに一歩前に出る感じです。ノイズの多い古い録音でもむしろ入力された信号だけを深々と出すように明瞭度が高まります。全体としてはコンサートの楽器用機材に近い構成なのですが、ユニットが50年代の家庭用のものなので少し甘めで聴きやすい音色になってます。しかし基本的なユニットのポテンシャルが高いのでボーカルの押出しなどは絶品です。

 


b.小型音声モニター

Micro Solution社の小型スピーカー


 音声モニターはもともとラジオの生放送や映画館の映写室などで機器の情況をチェックするためのモニターに使われていたものと思われます。ようするにマイクの調子はどうかとか、変なノイズが混入してないかなどを音を流しながらチェックするものです。テレビ時代になるとこれが音声と映像の同期をとるための簡易モニターとしても使われます。このため音声を精緻に聴くのではなく、輪郭を大雑把に聴くように造られています。調味料をmg単位で調べるのではなく、大さじ小さじと大まかに決めるのに役立ちます。

 最近よく使っているのがMicro Solution社のType-Sという5cm径の小型フルレンジで、パソコンでのDTM用途に作られたスピーカーです。ダブルバッフルという共振点のないエアー抜き機能が付いていて、低音の量感はないがこのサイズにしては籠もりのない素直な音で、ボーカル域の抜けだしが非常に良好です。古い録音も新しい録音も同じスタンスで聴けるのが面白いです。なので30年隔たった奏法の比較などにはとても便利な機材です。

 


c.ニアフィールド・モニター

富士通テンTD512(目玉おやじ?)



 ニアフィールド・モニターはステレオ・ミキシングのバランス調整用に造られた小型スピーカーで、70年代後半からスタジオで使われるようになりました。1m(3フィート)の正三角形の頂点で聴くのが正常な設置となります。通常は部屋の反射で低音が膨らむので100Hzから下は−3dB/oct程で降下するように設定してあります。その代わりステレオ音場の再現性は大型スピーカーと比べて非常に見渡し良く、逆にサウンドは質素で味気ないものになります。周波数特性上ではバランスを重視した造りになっているため、録音の状態をいち早く知りたいときはこの手のものに限ります。

 最近になって富士通テンからTD512というシングルコーンのニアフィールド・モニターが発売されました。これがまた素直を絵に描いたような音で、長らく続いた日本製フルレンジの伝統を引き継ぐ好ましい音質です。タイムドメイン理論によってユニットからの発音タイミングの統一性を図る構造を採っていて、小さい割に重量があり卵型エンクロージャーは殻のようにユニットからフローティングされてます。グラファイト繊維のユニットはフォスター電機のOEMだそうで、海外でも概ね好評のようです。デザイン的には海外ではスペース・エイジ(宇宙生活をイメージしたSF)という70年代ファッションがあるのですが、日本的にはゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじなのだそうです。




d.音声のコントロール

上段:Lexicon社のデジタル・エフェクター
中段:DegiTech社の真空管マイク・プリ
下側:ORAM社のパラメトリックイコライザー



 最後に様々な状態の録音を再生するために入力側のコンディションを調整する必要があります。もちろん市販の録音はプロのエンジニアによって整えられたものですが、国も時代も違う様々なエンジニアが良いと思った音の集約でしかありません。特に昔の録音になればなるほどリマスターの際に一種の解釈が入り込む余地があり、同じ時代の録音でも全く違う音色をもつものも少なくありません。このためリマスター現場と同じ情況を再現する必要性が出てくるわけです。もちろんモニターに使っているスピーカーとの相性の問題もあるので、自分用にサウンド・キャラクターを整えるのが早道のように思います。揃えてる機材はサウンド・キャラクターの調整のためのイコライザー、エコー感を加えるデジタル・リバーブです。いずれも録音用に使われるもので見掛けはツマミだらけの機々械々な出で立ちです。

 パラメトリック・イコライザーはORAM社製で、Oram氏は70年代からイギリスのTrident社でスタジオ用コンソールの設計に関わってきた大御所で、ブリティッシュ・イコライザーの父とも呼ばれています。とてもニュートラルな音色を持ったもので、調整の際の位相反転も極小に抑えられています。それでも大体±3dB程度の調整が目安です。
 Lexicon社のリバーブは80年代以降のポップスの録音では必ず使われているもので、デジタル機器に似合わない太い音とスムーズなリバーブの掛かりが売りです。私の機種は最も安いものですが、それでもレキシコン・トーンと呼ばれる独特の音色は健在です。特に派手な音造りをするわけでもないのでこれで十分だと思います。






 以上、私なりの音声モニターの方法について概略を述べました。普通のステレオとは大分違う感触を持たれたのではないかと思います。これも私自身がオリジナル音源(LP、SP、テープなどを蒐集する)のマニアではなく、CDで全ての音源に広く浅く付合うための方便でもあります。またボーカル域の再生が命と思っているので高音や低音はあまり伸びていないスピーカーが多いです。しかし特定の時代や特定のジャンルにこだわる人と話してみても、それぞれに対し中間的な位置で話題に接することができるようです。数ある録音に対してあれもこれもという貪欲な姿勢が生み出した奇策の数々を述べようと思います。


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